診療科のご案内泌尿器科

腎不全について

腎不全について

腎臓は糸球体と尿細管と呼ばれる部分からできており、体にとって不要な物質の排泄と、体のバランスを保つ働きがあります。体にとって不要な物質の排泄する働きは、エネルギー源となる物質が体内で利用された結果できた老廃物を排泄したり、体内の余分な水分を排泄し体内の水分量を一定に保ちます。体のバランスを保つ働きは、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン等)の濃度や量を調節したり血液を弱アルカリ性に保つ体液バランスの調節の働きや、血圧を調節するホルモンの分泌や、ビタミンDの活性化や、造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌があります。

上記の腎臓の機能が低下して、体内の老廃物や余剰な水分を十分に排泄できず、様々な体のバランスを調節できない状態を腎不全といいます。腎不全は大きく急性腎不全と慢性腎不全とに分けられます。

急性腎不全
外傷による循環不全や尿路の閉塞等により、数時間から数日で腎不全となりものです。一時的に透析療法を必要とする場合があります。腎不全となった原因を治療することで、大部分は腎機能が回復します。

慢性腎不全
数ヶ月から数年の経過で腎機能が徐々に悪化し腎不全となるものです。末期腎不全にいたると透析療法か腎移植が必要となります。慢性腎不全の原因には糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、嚢胞腎等があります。

透析療法・腎移植の統計
末期腎不全にいたると透析療法か腎移植が必要となります。透析療法には血液透析(Hemodialysis: HD)と腹膜透析(Peritoneal Dialysis: PD)とがあります。現在、97%強の方が血液透析を、残り3%弱の方が腹膜透析を行っています。日本透析医学会の統計調査では、2021年末の日本の透析人口は349700人で、毎年増加していますが、2021年をピークに減少すると予測されています。2021年の透析導入患者さんは40,511人(血液透析38,141人腹膜透析2,370人)でありここ数年ほぼ一定数で、2021年は2020年に比べ233人減少しました。2021年末現在、透析を行っている患者さんの平均年齢は69.67歳(前年比+0.37歳)、新規透析導入患者さんは71.09歳(前年比+0.19歳)といずれも年々高齢化しています。また、人口100万人当たりでは2786.4人で、国民358.9人に1人が透析患者さんです。現在透析をされている方の透析原因疾患は、糖尿病性腎症(39.6%)が最多で次いで慢性糸球体腎炎(24.6%)腎硬化症(12.8%)でしたが、近年は糖尿病性腎症を原因とする導入例の増加は止まってきたようで腎硬化症(高血圧が原因)が多くなってきています(2021年透析導入原因疾患は、糖尿病性腎症40.2%、腎硬化症18.2%、慢性糸球体腎炎14.2%、原疾患不明13.4%)。群馬県内では2021年末現在6367人(血液透析6251人 腹膜透析116人)の方が透析療法を行っています。
腎移植は2020年には1711件(前年比―346件)行われており、生体腎移植が1570件、献腎移植が141件(心停止献腎17件 脳死献腎124件)でした。
公立館林厚生病院において、2022年に透析を導入した患者さんは22人(血液透析22人、腹膜透析0人)でした。糖尿病性腎症が10人、腎硬化症(高血圧)が9人、多発性嚢胞腎2件、原疾患不明が1人でした。緊急透析あるいは他院で透析中の患者さんが他疾患にて当院で加療時に一時的に透析を行ったのは17症例でした。

透析療法を開始する基準
慢性腎不全が進行し、末期腎不全となった場合、どの時期に透析療法を開始するかについて、1991年に厚生科学研究事業・腎不全医療研究班により透析導入基準が提案されました。この基準は患者さんの臨床症状、腎機能、日常生活障害度等を総合的に評価し点数化したものです。

慢性腎不全に対する長期透析適応基準

1.臨床症状

  1. 体液貯留(全身性浮腫、高度の低蛋白血症、肺水腫)
  2. 体液異常(管理不能の電解質・酸塩基平衡異常)
  3. 消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、下痢など)
  4. 循環器症状(重篤な高血圧、心不全、心包炎)
  5. 神経症状(中枢・末梢神経障害、精神障害)
  6. 血液異常(高度の貧血、出血傾向)
  7. 視力障害(尿毒症性網膜症、糖尿病性網膜症)

これら1の7つの小項目のうち3個以上のものを高度(30点)、2個を中等度(20点)、1個を軽度(10点)とする。

2.腎機能

  • 血清クレアチニン(mg/dl)、[クレアチニン・クリアランスml/min]
  • 8mg/dl以上、 [10ml/min未満] 30点
  • 5~8mg/dl未満、 [10~20ml/min] 20点
  • 3~5mg/dl未満、 [20~30]ml/min] 10点

3.日常生活の重症度

  • 尿毒症症状のため起床できないものを高度 30点
  • 日常生活が著しく制限されるものを中等度 20点
  • 通勤、通学あるいは家庭内労働が困難となった場合 10点

付帯条件として10歳以下の年少者、65歳以上の高齢者、および全身性血管合併症のあるものについては10点を加算する。
1~3の合計得点が60点以上になったときに透析療法の導入基準とする。
(1991年厚生科学研究事業・腎不全医療研究班)

血液透析
人工腎臓を用いて、血液を体外に引き出し、これを浄化する部分である透析器(ダイアライザー)に誘導し、老廃物を取り除き、浄化した後に再び体内に戻す操作を行います。 透析は通常、週3回、透析施設に通院します。月、水、金または火、木、土というように隔日に行います。一回あたりの透析には4~5時間必要です。透析を行うには十分な血液をダイアライザーに送るため血流を増やす必要があります。手術で前腕の動脈と静脈を吻合し、動脈血を静脈内に誘導するようにして、静脈の血流量を増やします。この手術を内シャント術といいます。血液透析を開始する前に作製し、透析に備えます。血液透析はこの内シャントに穿刺針を刺すことにより、血液を体外に引き出して行います。

腹膜透析
腹腔内に腹膜透析液を入れて、腹膜を介して水分や老廃物を取り除く方法です。器具の交換、消毒等を自分で行い自宅で行う事が可能です。腹膜透析を行うには、手術で専用の管(腹膜カテーテル)を腹腔内に留置する必要があります。この管を使って、腹腔内にバックに入った約2リットルの腹膜透析液を入れます。数時間後にこれを空のバックに出して捨て、新しいバックをつけ換えて、腹腔内に新しい透析液を入れます。このような操作を1日4~5回自分で行います。一回の操作に約30分かかります。腹膜透析は、このように行う連続携帯式腹膜透析(CAPD)の他に、夜間に自動腹膜透析装置(APD)を用いて集中的に行う方法もあります。

腎移植
手術で腎臓を骨盤内に移植するものです。移植には家族から腎臓を移植する生体腎移植と、脳死者、あるいは心停止直後の死者から移植する献腎移植があります。生体腎移植は年間1400~1500件、献腎移植は150~200件行われています。腎移植は透析療法より体調がよく、移植後は体の掻痒感や味覚障害の改善など、生活の質を向上させます。順調であれば普通の人と同じ生活が可能です。拒絶反応を予防するため、免疫抑制剤の服用が必要です。

腎移植件数の年次推移

最終更新日

PAGE TOP