前立腺肥大症について
前立腺肥大症について
<”前立腺”って、なあに>のページも参照してください
排尿困難や頻尿等の様々な排尿症状は、前立腺肥大症にともなう尿道の圧迫や、加齢にともなう膀胱の機能障害等によって引き起こされます。 前立腺肥大症は組織学的には、40歳代では8%に、50歳代では50%に、80歳以上では90%の男性にみられると言われていますが、その全ての方に排尿症状が起こるわけではなく、55歳で約25%の男性に排尿の勢いの低下を認めると言われています。
前立腺肥大症の症状には、残尿感、頻尿、排尿途絶、切迫性尿失禁、尿の勢いの低下、排尿時のいきみ、夜間頻尿、等があります。
日本泌尿器科学会の男性下部尿路症状・前立腺肥大症の診療ガイドラインでは次のステップに従って診断・治療を行うことが薦められています。 1)基本的評価:病歴聴取、質問票による評価、直腸診等の診察、尿検査、尿流量測定、残尿測定、前立腺特異抗原(PSA)の測定、前立腺超音波検査。
質問票:国際前立腺症状スコア(IPSS)、QOLスコア、主要下部尿路症状スコア(CLSS)、過活動膀胱症状スコア(OABSS)<最終頁参照>
直腸診 | 肛門より指で前立腺を触診して、前立腺の大まかな性状の診察 |
---|---|
尿流量測定 | 尿をたくさん貯めて(150ml以上)機械に向かって排尿してもらうと尿の勢いの具合がグラフになって表示されます。最大尿流量が目安です。 |
残尿測定 | 排尿後膀胱の超音波検査(エコー)にて間接的に測定します。残尿50mlがひとつの目安です。 |
PSA | 血液検査で前立腺癌の除外診断。 |
前立腺エコー | 前立腺の超音波検査です。簡易的には腹部から、より精密には直腸から行います。前立腺の大きさ、性状のチェックです。 |
必要に応じて下記の検査を行うこともあります(選択評価)
排尿記録 | 排尿時刻・排尿量・水分摂取量・尿失禁の有無等を記載。 |
---|---|
尿流量動態検査 | 簡易的には、尿道より挿入したカテーテルより空気を入れ膀胱を膨らませながら膀胱の機能を測定します。より精密には、カテーテルより水を入れ膀胱を膨らませながら膀胱の機能、尿道括約筋の機能、排尿状態を測定します。 |
膀胱尿道鏡 | 内視鏡で膀胱と尿道の前立腺による圧迫状況等の検査。 |
上部尿路(腎臓や尿管)検査 | 超音波(エコー検査)や造影剤を使用したX線検査。 前立腺肥大症による腎障害や尿管結石等のチェック。 |
尿道造影 | 尿道が前立腺でどの程度圧迫されているか調べるX線検査 |
前立腺肥大症の治療は下記の方法があります。
1. 経過観察:
- 軽症な患者さんには標準的な選択肢です。過度な水分摂取を控える・膀胱に十分尿がたまってから排尿する・刺激性のある食物摂取を控える・適度な運動・便通の調節等を行います。症状悪化等の場合に速やかに他の治療を選択します。
2. 内服治療:(主に前3者が使用されます)
- αー交感神経遮断薬(前立腺の緊張を解いて尿を出しやすくする)
- 5α還元酵素阻害薬(前立腺内で男性ホルモンが活性の高いホルモンになるのを阻害し前立腺を縮小させる。)
- PDE5阻害薬(尿道や前立腺の平滑筋の緊張を解いて、前立腺の緊張を解いたり血流を改善する。)
- 抗アンドロゲン剤(主に男性ホルモンを抑制することによって前立腺を縮小させる。)
- 植物エキス製剤
3. 手術療法:主な手術療法は下記のごとくです。
- 開腹手術(被膜下摘除術):現在はほぼ行われません。
- 経尿道的前立腺切除術(TUR-P):
現在の標準的な手術療法です。腰椎麻酔をかけた後に、尿道から内視鏡を挿入して前立腺を削り取る1時間ほどの手術です。前立腺肥大症の治療としては効果的です。(2022年1件)
<前立腺肥大症の新しい手術:経尿道的前立腺核出術(TUEB)>のページも参照してください。 - ホルミウムレーザ前立腺核出術(HoLEP):レーザーにて前立腺を経尿道的に剥がして摘出する手術です。
- レーザー前立腺蒸散術:レーザーにて前立腺を経尿道的に蒸散(溶かす)手術です。
- 高密度焦点式超音波治療(HIFU):経直腸的に超音波を前立腺に集族させ前立腺を壊死させる(溶かす)手術です。
- 経尿道的水蒸気治療:経尿道的に水蒸気を前立腺に注入し溶かす(蒸散)方法です。