診療科のご案内泌尿器科

膀胱癌(膀胱腫瘍)について

膀胱癌(膀胱腫瘍)について

膀胱は、尿を貯めて排尿する臓器であり、内側より、粘膜、粘膜下組織、筋層、外膜に分けられます。
膀胱癌は、主に粘膜から発生し、その症状としては、大多数の患者さんに血尿をともない、頻尿、尿意切迫感、排尿困難等を示すこともあります。2013年の年齢調整罹患率は10万人当たり6.6人で、男性11.5人・女性2.6人で、2016年の年齢調整別死亡率は10万人当たり2.1人(男性3.7人・女性1.0人)でした。

診断には、膀胱の内視鏡検査は必須であり、尿の中のがん細胞の有無を顕微鏡でみる細胞診も必要です。生検あるいは経尿道的膀胱腫瘍切除術にて確定診断を行います。
腫瘍の拡がり具合をみるために、超音波検査(エコー)やCTは必要であり、時にMRI、稀に経静脈性腎盂造影、骨シンチ(全身の骨のレントゲン検査)等が必要となります。

上記諸検査によって病期診断、組織診断が行われます。
病期診断・組織学的診断
TNM分類

T:原発腫瘍の壁内深達度

 Tis: 上皮内癌(CIS)
 Ta: 粘膜にとどまり浸潤はない
 T1: 粘膜下結合組織までの浸潤
 T2: 膀胱筋層浸潤のあるもの
   (T2a:筋層半ばまでの浸潤
    T2b:筋層半ばを越えるもの)
 T3: 膀胱周囲脂肪組織への浸潤があるもの
   (T3a:顕微鏡的浸潤,
    T3b:肉眼的浸潤、膀胱壁外に腫瘤があるもの)
 T4: 腫瘍が以下のいずれかに浸潤するもの
   前立腺、子宮、膣、骨盤壁、腹壁
   (T4a:前立腺、子宮、あるいは膣への浸潤、
    T4b:骨盤壁あるいは腹壁への浸潤)

N:所属リンパ節
 N0: 転移なし
 N1: 2cm以下の1個の転移
 N2: 2-5cmの1個の転移または5cm以下の多発性転移
 N3: 5cmを越える転移

M:遠隔転移
 M0: 転移なし
 M1: 遠隔転移有り
臨床的には、上皮内癌、筋層非浸潤性膀胱癌と、筋層浸潤性膀胱癌に分けることができます。

組織学的分類
膀胱癌の大部分は尿路上皮癌というタイプです.

上皮内癌(Tis)
粘膜にのみに存在し、粘膜に沿って横に拡がっていく腫瘍です。
最も効果的な治療は、BCGの膀胱内注入で、50-65%の患者さんで治癒を認めます。
BCGの膀胱内注入の副作用としては、発熱、頻尿等の膀胱炎様症状、肝機能障害等を時に認め、ごく稀に膀胱萎縮や結核感染を起こすと言われておりますが今まで重篤な症状は経験したことがなく一般的には膀胱内注入は安全に施行できます。

筋層非浸潤性(表在性)膀胱癌(Ta,T1)
粘膜、及び、粘膜下組織までの腫瘍です。 膀胱の筋肉層へは浸潤していない癌です。最も効果的な治療は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)であり全ての患者さんで治癒を認めます。しかし、3年以内に約半数の患者さんに膀胱内に再発を認め(再び経尿道的膀胱腫瘍切除術で治癒可能です)、5ー15%の患者さんは、浸潤性膀胱腫瘍に進展する事があります。再発予防のためTURBT直後に抗がん剤の膀胱内注入を行っていますが効果は完全ではありません。再発を繰り返す場合や多発性の場合はBCGや抗がん剤の膀胱内注入を術後定期的に行うこともあります。膀胱内注入の副作用としては、頻尿等の膀胱炎様症状を時に認めますが今まで重篤な症状は経験したことがなく、ごく稀に膀胱萎縮を起こすと言われておりますが、一般的には膀胱内注入は安全に施行できます。
 退院後、外来では、膀胱内再発の早期発見、治療のために3ヶ月から6ヶ月毎の膀胱の内視鏡検査は、少なくとも5年間できれば10年間は必要です。

なお、当院では経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)施行時には、筋層をしっかり削りとり、正確な診断および正確な治療を心がけています。

筋層浸潤性( 浸潤性)膀胱癌(T2-4)
筋肉層から外側へ進展した腫瘍です。
標準的な治療は、膀胱全摘術です(術前及び術後の化学療法や免疫療法を行う場合もあります)。膀胱を摘出した後には、尿路変更が必要です。バッグ(袋)で尿を集める方法(回腸導管)、小腸で人工膀胱を作成して尿道より排尿する方法(自排尿型)、が代表的な方法です。なお、膀胱全摘術は開腹術で行う場合と腹腔鏡(補助)にて行う方法があり、当院では腹腔鏡下膀胱全摘術を原則としており、開腹術よりかなり体への負担が軽くなります(低侵襲)。なお、膀胱全摘術を行う場合は原則として術前化学療法(抗がん剤治療)を施行しています。
しかしながら、膀胱を温存した治療の方が普段の生活が楽であると考え、 腹腔鏡下膀胱部分切除術単独あるいは放射線療法と化学療法(抗がん剤治療)を組み合わせて腹腔鏡下膀胱部分切除術を行い膀胱温存を行うこともあります(但し適応となる患者さんはそう多くはありません)。
手術を行わないで化学療法(抗癌剤)や免疫療法を中心とした治療を行う場合もあります。

公立館林厚生病院泌尿器科の初診患者さんの件数です。

1987年―1999年 181症例
2000年:20症例2001年:16症例2002年:26症例2003年:19症例
2004年:27症例2005年:31症例2006年:34症例2007年:29症例
2008年:36症例2009年:32症例2010年:36症例2011年:38症例
2012年:32症例2013年:26症例2014年:33症例2015年:38症例
2016年:38症例2017年:39症例2018年:40症例2019年:42症例
2020年:41症例2021年:39症例2022年:46症例

1987年―1999年 181症例

最終更新日

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