腎盂尿管移行部狭窄について
腎盂尿管移行部狭窄について
尿は腎臓で造られるのですが、腎臓の腎実質で造られた尿は、腎杯という部屋に集まり、そこから腎臓の中央にある腎盂に集まります。そして腎盂から尿管を通って膀胱に尿は運ばれます。腎盂から尿管へ尿が通りにくくなるほど狭い場合(通過障害がある場合)を腎盂尿管移行部狭窄といいます。
腎盂尿管移行部の筋肉繊維の異常や結合組織の異常、腎臓へ行く血管の走行位置の異常等で起こることが多いといわれています。
症状としては側腹部痛が代表的でありしばしば悪心嘔吐を伴います。時に血尿を、また、腎盂腎炎を起こせば発熱を見ることもあります。また無症状のことも時にはあります。最近では、乳幼児では、妊娠中の超音波検査で見つかることも多いようです。
腎盂尿管移行部狭窄の診断には通常次の検査が必要です。(外来では通常は1~3の検査)
1. 超音波検査(エコー):水腎症の有無、経時的な水腎症の悪化・改善をチェックします。
2. CT:水腎症の状態・狭窄部の状態・走行異常の血管の有無の描出に威力を発揮します。特に造影剤を使用したCTは有用です。また、画像を処理して、尿管全体の走行を把握することも可能です。
3. 利尿レノグラム:放射性同位元素を用いた核医学的検査(被爆は一般的にX線検査より少ない)で、利尿剤を使用して行います。腎盂尿管移行部の通過障害の状況を知るのに有用です。
4. 逆行性腎盂造影:手術時に麻酔がかかった後に行います。尿道から膀胱に内視鏡を入れてその内視鏡で尿管に細い管を挿入し造影剤を流しながらレントゲン撮影し、腎盂尿管の状況を把握します。手術時の全身麻酔後の手術開始直前の検査となります。
以下の検査は稀に行います
5. 経静脈性腎盂造影:造影剤を静脈注射し尿中に排泄された造影剤により腎実質、腎杯、腎盂、尿管の形態をレントゲン撮影します。水腎症の状態・狭窄部の状態が観察できます。造影剤を使用したCT後に撮影し、この検査の代用にすることが多いです。
6. 排尿時膀胱尿道造影:尿道から細い管を膀胱に入れそこから造影剤を流して尿管、膀胱、尿道の状況を観察するレントゲン検査です。膀胱尿管逆流症の有無、尿道の通過障害が解ります。
腎盂尿管移行部の通過障害のある場合、腎機能障害のある場合、疼痛がある場合、感染症(腎盂腎炎)を起こしている場合、結石を合併している場合、水腎症が進行性の場合等は治療が必要です。
治療は腎盂形成術という手術となります。以下の5つの方法が代表的な治療法です。腹腔鏡下(後腹膜鏡下)腎盂形成術は、歴史のある成功率の高い開腹術と同じ方法で行えるため開腹術と同じ成績が残せ、かつ、傷も小さく施行できます。また内視鏡による拡大視野により開腹術よりは縫合技術は難しいのですがその拡大視野にて細かい縫合が可能です。これらのことより現状ではこの手術方法が第一選択です。また、当院泌尿器科では3D内視鏡による3D画像での腹腔鏡手術を行っています。3Dによる立体感のある拡大画像をみながら、より正確で低侵襲な手術ができる方法です。
1. 腹腔鏡下(後腹膜鏡下)腎盂形成術:おなかに5mmの2カ所・12mmの1カ所の計3本の小さな穴を空けて、腹腔鏡下に狭窄部を切除して腎盂と尿管を再吻合する手術です。走行異常血管があった場合にも対応可能です。当院ではこの手術が第一選択ですが、施行可能な国内の施設は限られています。当院では、現時点で127症例と豊富な経験があり、ロボットを使用しなくとも、ロボット支援下手術と同等以上の精密な手術が可能と考えています。傷は下記ロボット支援下手術よりは小さくなり、当院の腹腔鏡下手術手の傷は、12mm、5mm、5mmの3つです。
2. ロボット支援下腹腔鏡下(後腹膜鏡下)腎盂形成術:上記1)と同様な手術です。手術器具をロボットアームにつなげてそれを人が動かします。上記腹腔鏡下(後腹膜鏡下)腎盂形成術に比べ、おなかの穴の傷は一般的にやや大きくなり数も多くなります。
一般的に、12mm、7mm、7mm、5mmの4つです。しかしながら、初期の症例でも腎盂と尿管の縫合はある程度容易にできます。
3. 経皮的腎盂形成術:背中の10mmほどの小切開より内視鏡を腎内に挿入し、狭窄部を切開してカテーテルを入れておく手術です。当院では施行可能ですが、施行可能な国内の施設は限られています。
4. 経尿道的腎盂形成術:尿道から尿管に内視鏡を挿入し狭窄部を切開してカテーテルを入れておく手術です。
5. 腎盂形成術:開腹術にて狭窄部を切除して腎盂と尿管を再吻合する手術です。
公立館林厚生病院では、2022年12月までに133人の腹腔鏡下腎盂形成術の経験があり、我が国では有数の経験症例です。ここ最近5年間の腹腔鏡下腎盂形成術の症例は48人です。腹腔鏡下腎盂形成術は施行可能な施設が少ないため、患者さんの多くは当院診療圏外から紹介受診であり、ここ最近5年間に施行した腹腔鏡下腎盂形成術48人の内、45人は県外(県外は28人)も含め当院診療圏外からの来院でした。